【SS】「ぼっち・ざ・ろっく!」×「しょうこセンセイ!」(後編)

*注意!
この記事は「ぼっち・ざ・ろっく!」と
「しょうこセンセイ!」のクロスオーバー二次創作
SSです。
100%私の妄想で出来上がってますので、
そういうのが苦手な方はご遠慮ください。

(前編のあらすじ)
ぼっちちゃんの通う高校に研修にやって来た
翔子先生。何とかぼっちちゃんに話しかけよう
とする翔子先生だったが、
中々上手くいかなくて・・・

「はぁ・・・やっぱり私の家は落ち着くなぁ」
「いやいや、ぼっちちゃん、ここ私の家だから。
ぼっちちゃんの家じゃないからね」
「おーい、二人とも、サボってないで働けー」
ここは下北沢のライブハウス、「スターリー」。
私、後藤ひとりことぼっちはここで
バイトをしています。
あっ、ぼっちというのは私の渾名です。
別に悪口じゃないですよ?
初めてつけて貰った渾名なので、
結構気に入っています。
先ほど私に声をかけていたのは伊地知姉妹、
姉の方はここスターリーの店長です。
見た目はちょっと怖いけど、私には結構甘いです。
(何でだろうね?)
妹の方は虹夏ちゃん、「結束バンド」の
ドラム担当です。バンドではリーダー的存在で、
いつも明るく、私たちを引っ張ってくれています。
「どうしたぼっち、また何か悩みごとか?」
「あっ、リョウさん、おはようございます・・・」
こちらは山田リョウさん、「結束バンド」では
ベース担当です。ミステリアスで何を
考えているのか分からない人ですが、
実際のところ、何も考えていないんじゃないかと
最近は噂されています。
「実はかくかくしかじか」
「まるまるうまうま。なるほど、
面白そうなことになってるじゃないか、ぼっち」
そう言うと、リョウさんは目を輝かせてこちらを
見つめてきました。いつの間にか虹夏ちゃんも
一緒です。
「いーなー、ぼっちちゃんの高校は今そんなこと
になってるんだー。私もそのちびっこ先生に
会ってみたいなー」
「私も会ってみたい。インスピレーションが
湧いてきて新曲が捗りそう・・・フフ」
二人ともすっかりちびっこ先生に興味津々だ。
全く、こっちはそのちびっこ先生に
追いかけ回されて大変な目に遭っているのに。
「オラッ、お前ら駄弁ってないで仕事しろ!
もうすぐお客さんも入ってくるだろ!」
「はーい、分かったよお姉ちゃーん」
「店長と呼べ!」
そんな店長が一喝した時、 ガタン、と店の扉が
開く音がした。
「あっ、すいませーんお客さん、まだオープン前
なんですよ・・・うん?」
「あっ、いえっ、私は客じゃなくて・・・」
そこには白衣を着た小さな女の子が、少しオドオド
しながらも、はっきりとした口調でこう言った。
「あっ、あのっ、こちらに後藤ひとりさんは
いらっしゃるでしょうか!」

「じゃあ、今までは全て誤解だったと?」
「ご、誤解というか・・・私が一方的に
逃げてただけなので」
ここはライブハウスの奥の一室、
私、吉田翔子は後藤ひとりさんと面と向かっていた
ちなみに、後藤さんの隣には同年代と思われる
女性が二人、しっかりと脇を固めている。
これではもう、後藤さんも逃げられませんね。
「良かったです。てっきり嫌われてしまったの
かと思って」
「そ、そんな・・・すみません、知らない人と
話すのが怖くて。別に先生のことが嫌いという
訳ではないんです」
こうしてあらためて話してみると、後藤さんは
非常に真面目な生徒ですね。ちょっと人見知りが
激しいところはあるけれど、話してみると
ちゃんと受け答えも出来るので安心しました。
「ねーねー、何で先生はぼっちちゃんのことを
そんなに気にしてくれたの?
あ、私の名前は伊地知虹夏、下北高校の二年です
よろしくね!」
「同じく下北高二年の山田リョウ・・・
食べられる雑草のことなら任せてくれ」
個性的なお友達ですね!?
うーん、何で私が後藤さんを気にかけたか、
ですか。
「後藤さんは、その、学校で少し
浮いているような気がして・・・もしかしたら
何か悩みごとや、いじめられたりしてるのでは
ないかと思って」
「あっ、いえっ、いじめはありません。
いじめられるほど存在感がありません・・・」
「あー、でも何となく分かるなー。
ぼっちちゃん、確かに存在感は薄いけど、
どこかほっとけないオーラがあるもんなー。
私が最初に話しかけた時もそうだったもん」
そう言うと、虹夏さんは後藤さんの肩をポンポンと
叩き、後藤さんはどこか困ったような顔をして
苦笑いを浮かべていた。
良かった、ここまで後藤さんを探してきてようやく
分かったことがありました。
後藤さんにとって、このライブハウスが居場所
なんですね。学校にいる時と比べて、明らかに
雰囲気が変わりました。きっと、このライブハウス
の空気や、お友達との絆がそうさせているのですね
「そうだ、先生、この後暇?私たちはこれから
バイトだけど、終わったらバンドの練習をする
予定なんだよねー。よかったらちょっと
聴いていかない?」
「良いんですか?是非、お願いします!
私、後藤さんの音楽に非常に興味があります!」
そんな訳で、私は彼女達のバンド、「結束バンド」
の演奏を聴かせて貰うことになりました。
どんな音楽なんでしょう、ワクワクしますね!

「それじゃあ、まず何からいく?」
「『ギターと孤独と蒼い惑星』でいいんじゃない
ぼっち作詞だし」
「い、今更ですが少し恥ずかしいですね・・・」
「もう、後藤さんったらまたそんな事言って!
もっと堂々としてればいいのよ!」
時刻はバイト終わり、場所はスターリーの
練習部屋、私たち「結束バンド」の四人、
虹夏ちゃん、リョウさん、喜多さん(合流した)、
ぼっちはそれぞれの楽器を手に集まっていた。
そしてここにはもう一人、観客として吉田先生が
椅子に座って演奏を待ちわびていた。
「そ、それでは聞いてください。
『ギターと孤独と蒼い惑星』」
「わーい、パチパチパチ」
吉田先生が無邪気に拍手している。
すぅっ、と息を深く吸い込んで、
ギターを持つ指に力を込めた。
演奏が始まってしまえばこちらのものだ。
今まで何十回、何百回と練習してきた譜面、
間違える筈がない。
弦を押さえる指に更に力が入る。
何だか体の奥が熱い。普段の練習とは違う、
まるでライブに出ている時のような熱さだ。
チラリと周りに目を配る。
虹夏ちゃんのドラムもいつもよりキレがいい。
リョウさんはいつも通り安定感が抜群だ。
喜多さんもいつの間にかギターを弾く姿が
様になってきている。
そして相変わらず綺麗なボーカルだ。
あらためて思う。
ああ、やっぱり音楽って最高だ。
バンドって最高だ―――。

「あの、その、何と言うか、上手く言葉に
出来ないんですけど・・・もの凄く
『熱かった』ですっ!」
正直、予想以上でした。
間近で生演奏を聴いたのが生まれて初めてだった
こともありますが、こんなにも音楽のパワーを
感じたのは予想外でした。
それほどまでに後藤さんたちの演奏には熱が
ありました。
「さーて、一曲終わったし、次はどうする?
もう一曲オリジナルいっとく?」
「それもいいけど・・・先生、何かリクエス
とかありませんか?」
「えっ、リクエスト?良いんですか?
そんなに直ぐに弾けるものなのですか?」
「弾きます、ぼっちが」
「えっ、私が!?」
山田さんから不意を突かれて後藤さんがたじろぐ。
キョロキョロと周りを見た後に、
少し自信なさげにこちらに向き直った。
「う、売れ線のバンドの曲は大体マスターしてる
ので、簡単な奴なら弾けると思います・・・」
「そうなんですか、凄いですっ!
流石後藤さんですねっ!」
いやぁ、と後藤さんが照れる。
しかし、リクエストですか・・・
私の持ち歌といえば、アレしかないですね!
「それじゃあ、『ふわりんまじかる行進曲』
をお願いできますか?」
「ふわ・・・ちょっと待って下さいね」
そう言うと山田さんはスマホをちょいちょいと
いじって、直ぐに画面をこちらに見せてきた。
「ありました、『ぶれーめんマーチ』っていう
アニメの曲ですね。ほら、Y○uTubeに
上がってた」
そうです、これです。最近は何でもネットに
ありますね。
「どうだ、ぼっち、弾けそうか?」
「じゅ、10分下さい・・・」
―――10分後―――
スマホとにらめっこしながらアセアセとギターを
鳴らしていた後藤さんが帰ってきました。
「な、何とか弾けそうです・・・」
「おっ、やるな、流石ぼっち」
「もう、リョウが無茶振りするから・・・」
「でも、やっぱり後藤さんは凄いわね!」
メンバーが口々に好き勝手言っています。
「それじゃあボーカルは先生でよろしく!
私たちは手拍子でもしてるから!」
「ええっ、私ですか!?
・・・いえ、せっかくなので、不肖吉田翔子、
歌わせていただきます!」
マイクを手渡され、少し緊張しますが、
後藤さんと目を合わせ、
うん、大丈夫だよ、とアイコンタクトをして、
後藤さんがギターを弾き始めた。
ミュージック、スタート!
ふわふわりんりん〜♪
まじでまじかるふわりんりん〜♪
き〜み〜の〜弾ける笑みまじかる〜♪
ふわふわりんりん〜♪
まじでまじかるふわりんりん〜♪
つ〜ぎ〜は〜ぼくの番だまじかる〜♪
だ〜って〜
きみはぼくのまじかる〜♪
(以下、翔子先生の熱い歌唱が続きましたが
省略されました)

「わ、もうこんな時間。そろそろ帰らないと」
「私もそろそろ」
「あっ、私も・・・」
「それじゃーみんな、今日はこの辺でお開きだね」
「皆さん、今日はお疲れさまでした!
とっても楽しかったですっ!
気をつけて帰ってくださいね!」
夜も更けてきた頃、結束バンド+1名は、
自宅がライブハウスの虹夏ちゃんを除き、
それぞれの帰路についていた。
ライブハウスを出る前、最後に吉田先生が
話しかけてきた。
「あのっ、後藤さん、あらためて、今日は本当に
ありがとうございました。こんなに素敵な音楽を
聴かせていただいて」
「い、いえっ、そんな。こちらこそわざわざ
こんなところまで来て貰って・・・
ありがとうございます、吉田先生」
まだどこかぎこちなく会話する二人、
ふふっ、と吉田先生が笑った。
「翔子先生、と呼んで貰っても構いませんよ。
私の学校ではみんなそう呼んでいます。
代わりに、ぼっちさん、と呼んでも良いですか?」
「えっ、その、えっと・・・」
突然の事に口をモゴモゴさせる。
ちょっと恥ずかしい。
「い、良いですよ、しょ、翔子先生・・・」
「はいっ、ありがとうございます、ぼっちさん」
今度は二人で、ふふっ、と笑った。
翔子先生、8歳の天才ちびっこ先生、
最初は近寄りがたかったけど、
話してみたら真面目で熱心な良い先生だったなぁ。
こんな先生が正式にウチの学校にいたら、
もっと学校も楽しくなるのかなぁ。
んんっ、短い間だったけど、
今から別れがちょっと辛いかも。
「それでは」
「それじゃあ・・・」
二人が同時に声をあげた。

「「また明日、学校で」」

(終)