【SS】「ぼっち・ざ・ろっく!」×「しょうこセンセイ!」(前編)

*注意!
この記事は「ぼっち・ざ・ろっく!」と
「しょうこセンセイ!」のクロスオーバー二次創作
SSです。
100%私の妄想で出来上がってますので、
そういうのが苦手な方はご遠慮ください。

「はぁ・・・眠い、ダルい、辛い・・・」
私の名前は後藤ひとり、どこにでもいる普通の
女子高生だ。
あっ、すいません、いきなり嘘を吐きました。
私、全然普通じゃないんです。勿論、悪い意味で。
バカだし、運動オンチだし、人の目みれないし、
会話の頭に絶対「あっ」って付けちゃうし、
友達も・・・あんまりいないし。
そんな駄目駄目な私だけど、一つだけ、
他の人に負けない特技があるんです。
「やっぱり、昨日遅くまでギターいじっていたから
眠いなぁ・・・でも、おかげでまた一曲マスター
しちゃったなぁ、うへへ・・・」
あっ、すいません、気持ち悪い笑い声を聞かせて
しまって。
それはともかく、そうなんです、
私、後藤ひとりはギターが弾けるんです!
それも、女子高生のお遊びレベルじゃありません、
その腕前はプロ級・・・かどうかは分かりませんが
ネットの世界では「ギターヒーロー」って名前で
結構有名なんですよ?凄いでしょ?
まぁ、ソロばっかり上手くなって、
バンドで合わせるのはまだまだ何ですけどね。
そんな私の夢は、私の所属するバンド、
「結束バンド」をギタリストとして最高のバンドに
することです!
ふひっ、い、いきなりイキってすみません。
でも、結束バンドの仲間の虹夏ちゃん、
リョウさん、喜多さんと一緒なら、
いつか絶対に最高のバンドになれるって、
私、信じているんです。
だから私は、今日も(昨日も)夜な夜なギターを
掻き鳴らすのです!
「それにしても退屈だなぁ・・・そう言えば、
先週、他所の学校の先生がウチに研修に来るって
言ってたなぁ。どんな先生なんだろう、優しい
先生だと良いなぁ」
今、私は体育館で朝の集会に全校生徒と共に
並んでいるところだ。
周りの生徒達もどこか落ち着きなくそわそわしたり
おしゃべりをしたりしている。
そんなこんなで集会が始まり、校長先生や
教頭先生の退屈な話を半分聞き流しながら、
最後に、こんな発表があった。
「今日から一週間、我が校で研修・・・共に学ぶ
先生を紹介します。それでは吉田先生、一言
挨拶をお願いします」
そう言うと、体育館の舞台の端から一人の女の子が
どうみても小学生くらいの白衣を着た女の子が、
踏み台を持って舞台中央のマイクの前まで
トコトコと歩いてきた。
そうして、よいしょっ、と踏み台を降ろすと、
その踏み台に上がり、こう挨拶をしたのだ。

「み、皆さん、初めまして、皐月高校から来ました
吉田翔子といいますっ!年齢は8歳っ!好きな
食べ物はハンバーグ、苦手な食べ物はにんじんと
ピーマンですっ!好きな角度は30度ですっ!
担当は物理ですっ!
よ、よろしくお願いしますっ!」

私の名前は吉田翔子、職業は高校教師です。
人からはよく、天才だ、と言われます。
自分ではよく分かりません、だけど、
一々否定するのも面倒なので、いつの間にか
そう言われても聞き流すようになっていました。
私は現在8歳です。8歳で学校にも行かずに
(いや、学校には行ってるんですけど)
働いてるなんておかしいって言う人もいるけれど、
これが私の選んだ道だから、全然後悔なんて
していません。むしろ毎日が非常に充実しています
教師としてはまだまだ未熟な私だけど、
日々是勉強、学ぶことが沢山です。
えっ、趣味ですか?
趣味はアニメ鑑賞です。
最近のお気に入りは「ぶれーめんマーチ」という
アニメです。
そこに出てくる「ミッシェル」というキャラが、
その、大好きです。あ、ミッシェルというのは
クマのキャラクターでして・・・
(以下ミッシェルについての熱い説明が
ありましたが省略されました)

「は、8歳で先生とか凄いなぁ・・・私には
絶対に無理だ。きっと性格も陽キャに違いない。
うんうん、きっとそうだ。やはり陽キャ
駆逐しなくては・・・」
私、後藤ひとりはビビっていた。
8歳で高校教師だと?天才幼女だと?
フィクションか?フィクションなのか?
ひとしきり混乱したあと、今は冷静になった。
うん、これは違う世界の話なのだ。
私には関わりのない話なのだ。
そう思えば何ということはない。
いつも通り、バカなりに真面目に授業を受けて、
放課後はスターリーでバイトして、
バンドでは新曲の練習をして、
家に帰ったら一人でギターの練習をして・・・
そう、何も変わらない。
私の日常は何も変わらないんだ。

その筈だったんだ。

「吉田先生、調子はいかがですかな?」
「あっ、教頭先生・・・はい、皆さん、とても
よくしていただいています。
とっても順調ですっ!」
私、吉田翔子は休み時間に職員室で教頭先生に
話しかけられていた。
先生の仕事は生徒とのコミュニケーションだけ
ではない、先生同士のコミュニケーションも
大事なのです。
「ようやく生徒の半分の顔と名前を
覚えましたよ!研修が終わるまでには全校生徒の
顔と名前を覚えて帰れそうですっ!」
「そ、そうですか、それは凄いですね・・・」
教頭先生はビックリしたような顔をしていた。
何をそんなに驚いているのだろう、
生徒の顔と名前を覚えるのは基本中の基本なのに。
「ほ、他には特に気になっていることとかは
ありませんか?」
「気になっていることですか・・・」
私は少し思案した。そして直ぐに一人の生徒の
顔が思い浮かんだ。
「実は、1年2組の、後藤ひとりさん、
なんですけど・・・」

「た、助けてください、喜多さん〜」
「珍しく学校で話しかけてきたと思ったら、
どうしたのよ後藤さん・・・」
ここは私の学校の秘密の隠れ家その一、
使われなくなった階段の踊場である。
私が学校で一人になりたい時(お弁当の時間とか)、
度々利用している場所である。
そんな場所に今日はもう一人、
私の学校での唯一の友達(友達だよね?)、
喜多さんが隣にいた。
喜多さんは明るくて、可愛くて、クラスの人気者で
スポーツ万能で、歌も上手くて・・・
私とは全然違う完璧陽キャ人だ。
(完璧陽キャ人とは)
そんな喜多さんが何で私なんかと
仲良くしてくれているのは、
ギターがきっかけだった。
とある理由でギターが上手くなりたい喜多さんを、
私が時々練習を見てあげているのだ。
正直、ちょっと面倒臭いと思うときもあるけど、
頼られるのはそんなに悪い気分じゃない。
「それで、一体何がどうしたのよ?」
「あっ、はい、実は最近ストーカー
されてまして・・・」
「ストーカー!?後藤さんが!?一体誰に!?」
「あっ、はい、最近来たちびっこ先生に
です・・・」
詳しく話すとこうだ。
休み時間になると、件の幼女先生がやってきて、
「後藤さん!一緒にお話しましょう!」
と声をかけてくるのだ。それも一回や二回では
ない、一日に何度もやって来るのだ。
その度に私は、
「あっ、すいません、お腹の調子が悪くて・・・」
「あっ、すいません、頭の調子が悪くて・・・」
「あっ、すいません、ギターの弦が
切れてしまって・・・」
と言い訳してその場をダッシュで逃げているのだ。
「最後のは言い訳になっていないと思うけど。
それより後藤さん、それならせっかくだから、
吉田先生と仲良くしたら?
お友達になれるかもよ?」
「ひぇっ、と、友達・・・?む、無理です、
絶対に無理ぃ・・・」
怖い!よく知らない人と友達になるなんて怖い!
それに相手は天才ちびっこ先生だ。
私なんかと話が合う筈がない。
きっと気まずい雰囲気になって、相手を困らせて
しまうに違いない。
「うーん、せっかく相談してくれたのに
悪いんだけど、クラスも違うから私にはどうにも
出来ないわ。諦めて観念したら?」
「そ、そんなぁ、喜多さん・・・」
「あ、それから、今日のバイトは私は少し遅れる
から、リョウ先輩と伊地知先輩によろしく
言っておいてね。それじゃあね」
そう言うと、喜多さんはどこかに行ってしまった。
どうしよう・・・取り敢えず、今日の授業を
乗り気って、バイト先でも少し相談してみよう。
はぁ・・・気が重いなぁ。

「うーん、上手く行かないなぁ・・・」
私、吉田翔子は悩んでいた。
最初はクラスの中でちょっと孤立していたように
見えた彼女を、少し気にかけようとした程度だった
それがこうも毎回声をかける度に逃げられると、
こっちも少し意地になってきてしまった。
そんなこんなで今日はもう放課後である。
最後のチャンスとばかりに私は再び教室に向かった
「あっ、吉田先生。後藤さんですか?
後藤さんならもう帰りましたよ」
「そ、そうですか、残念です・・・もう家に
帰られてしまったんですね」
「いや、多分バイトじゃないですか?
クラスの子が下北のライブハウスで見かけたって
言ってましたよ。確かスターリーって言う所」
「ライブハウス・・・スターリー・・・」
これは思わぬ新情報だ。そこに行けば確実に
彼女に会えるだろう。
しかし、ライブハウスか・・・恥ずかしながら、
私はそのような所に行ったことが一度もない。
大学にいる時は研究で忙しかったし、
たまの休日は家でゴロゴロしてアニメを観るくらい
だったからだ。
「ライブハウス・・・もしかしたら、
そこは不良の溜まり場になっていて、
後藤さんを悪の道に引きずり込もうとしているの
では・・・?」
嫌な想像は連鎖して、私は最悪なパターンを
思い浮かべていた。
「これは・・・潜入捜査が必要ですね!」

(後編に続く)